親鸞聖人の生涯
〜『顛倒』連載版〜第39回
瑞興寺所蔵 親鸞聖人御絵伝
事件により土御門天皇の時、承元元年丁卯(一二〇七)仲春(二月)、
内裏での公卿僉議が行われ、同月下旬、法然上人ならびに上足の弟子に左遷の宣旨が下されました。
その中で善信房は、資材課流罪かなかなか決まりませんでしたが、
ちょうどその時六角中納言(日野一族の日野親経のこと・参議、従二位・一二一〇年に六十歳で没)が八座に列なっており、
何度もとりなしをしたために、遠流という処分に決定したということです。
同三月十六日牛の時、法然上人は京都を経って配所に赴きました。
罪名は(還俗させられたために)藤井元彦です。その流罪の地は四国。御歳は七十五歳。
追捕役は検非遺使の宋府生尚常。送使役は左衛門府生武次でした。
同三月十六日卯初刻(午前五時から七時)に善信聖人は京都を出発しました。
これは法然上人が、まだ京都におられる間に、少しでも先に出発したいと、かねてから使役役に頼んでいたからです。
還俗名は藤井善信。流罪の地は越後の国、頚城郡国府。御歳は三十五歳。
検非遺使は府生行連、送使役は府生秋兼と聞いています。
−−−親鸞聖人正明伝 より−−−
○<住職のコメント>
今月の文章は、よく取り上げている『親鸞聖人正明伝』の文章である。
法然の流罪への旅立ちの場面だが、本願寺の正当な親鸞伝である『御伝鈔』は、 「空聖人罪名藤井元彦 配所土佐国 幡多 鸞聖人罪名藤井善信 配所越後国 国府 此外の門徒死罪流罪 みな略之。」 とだけ書かれてあり、詳しくは書かれていない。
そう大切でもないように思える細部を書き留めていることに『正明伝』の真実性が伺えると、私は思うのだがどうだろうか。
ここで、親鸞(善信房)が死罪か流罪かで議論があったことが興味深い。いろいろなことが考えられる。
親鸞(善信房)は、吉水教団への入門が遅かったし、女性がらみの事件にも直接は関わっていなかったのに、 なざ死罪という極刑まで検討されたのだろうか。
1.公式に結婚したから 2.比叡山の公式僧侶であったのに、裏切って山を下りたから 3.入門は遅いが、『選択集』の書写や、法然の真影の図画を許されるなど、有数の弟子となっていたから。 などが考えられるが、いずれんしいても、親鸞の特別さを意味していると、私は思う。
一方、親戚による嘆願によって、流罪に原型になったところに、親鸞の貴族の血筋が見て取れる。 当時も、ホンネとタテマエはあって、法然の判決は「土佐に流罪」だが、実際は「讃岐」に留め置かれたし、 親鸞にしても、越後という遠い所で、一見とても厳しい刑罰に思えるが、 実は、親戚の日野氏が守護を勤める土地であり、後に妻になる付け人、恵信尼の親許でもある。 そこに、親鸞の出自を配慮した、朝廷の気配りがあると、私(住職)は思うのである。
法然の流罪への旅立ちの場面だが、本願寺の正当な親鸞伝である『御伝鈔』は、 「空聖人罪名藤井元彦 配所土佐国 幡多 鸞聖人罪名藤井善信 配所越後国 国府 此外の門徒死罪流罪 みな略之。」 とだけ書かれてあり、詳しくは書かれていない。
そう大切でもないように思える細部を書き留めていることに『正明伝』の真実性が伺えると、私は思うのだがどうだろうか。
ここで、親鸞(善信房)が死罪か流罪かで議論があったことが興味深い。いろいろなことが考えられる。
親鸞(善信房)は、吉水教団への入門が遅かったし、女性がらみの事件にも直接は関わっていなかったのに、 なざ死罪という極刑まで検討されたのだろうか。
1.公式に結婚したから 2.比叡山の公式僧侶であったのに、裏切って山を下りたから 3.入門は遅いが、『選択集』の書写や、法然の真影の図画を許されるなど、有数の弟子となっていたから。 などが考えられるが、いずれんしいても、親鸞の特別さを意味していると、私は思う。
一方、親戚による嘆願によって、流罪に原型になったところに、親鸞の貴族の血筋が見て取れる。 当時も、ホンネとタテマエはあって、法然の判決は「土佐に流罪」だが、実際は「讃岐」に留め置かれたし、 親鸞にしても、越後という遠い所で、一見とても厳しい刑罰に思えるが、 実は、親戚の日野氏が守護を勤める土地であり、後に妻になる付け人、恵信尼の親許でもある。 そこに、親鸞の出自を配慮した、朝廷の気配りがあると、私(住職)は思うのである。
―――以上『顛倒』2011年7月号 No.331より―――
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