年頭の挨拶
2011年 年頭の挨拶
世間虚仮 唯佛是真
昨年は、人類初めての原発震災が、この日本で起こり、そして、放射能被害はいつまでも続くという、本当に大変な年でした。
また、私たち真宗門徒にとっては、全く同じ時期に宗祖親鸞聖人七五〇回御遠忌法要が挙行され、
一層深い慙愧を感じ、つくづく「世間虚仮 唯佛是真」という佛語が身にしみます。
これは、聖徳太子の言葉として伝わるもので、太子が四九才でなくなられた後、太子が往生した浄土を描いて作られ、
現在は、奈良の法隆寺に在る中宮寺に所蔵されている刺繍、『天寿国曼陀羅(てんじゅこくまんだら)』の銘文に在る言葉です。
親鸞聖人は聖徳太子をとても大事にされていますが、この言葉を受けて、
「火宅無常の世界は、よろづのこと、みなもつてそらごとたはごと、まことあることなきに、
ただ念仏のみぞまことにておはします」という言葉を『歎異抄』に残されています。
これらの言葉を、
「世間の出来事は、どうでもいいことで、ただお念仏さえ唱えていればよい」などと、
簡単に受け取ってしまったら、それは大変な間違いです。
「世間虚仮」とは、「世間で声高に喧伝されることは、その場限りの無責任なことばかりだ」という意味です。
今般の東日本大震災では、「想定外」「日本の原発は安全」「ただちに被害は無い」と、
戦前戦中に、皆を煽り立てた「鬼畜米英」と全く同じ質の言論が、「大本営発表」よろしく、
マスコミ、「知識人」から垂れ流されました。しかし、それこそが「人間の世界」なのです。
私たちは、虚仮なる世間に在ることを深く知って、だからこそ、
「唯佛是真=永遠無限の視点こそ真実なのだ」と、虚仮性を見破る目を
いただいて、虚仮世間をしっかりと歩んでいこうということなのです。
この惨禍から、天に昇る龍の如く、生まれ変わるべき春。
「愛でたい・大切にしたい」という本来の意味の
「あけましてお愛でとう」を言うべき新年です。
二〇一二年 元旦 瑞興寺住職 清 史彦(法名 秀顕)