今、世界は! 

〜年頭の言葉
顧倒 2006年1月号より掲載
●<年頭の言葉>

























 
 この年頭の言葉は、ご存知、親鸞聖人の主著「教行信証」に在る。と言うより、真宗門徒が何よりも口に親しんでいる「正信偈」の一節です。「人がおごり昂ぶって失敗するのは、正しいものの見方をしていないからだ」と読むべきでしょうか、まさに私たち、人間の在り様を言い当てています。私も昨年、邪見によるきょう慢で顛倒して落ち込みました。

 一方、世の中はどうでしょうか。JRの度重なる大事故、耐震偽造の建物、大保険会社の不払い、代議士で弁護士の不正行動、新聞や放送記者の記事偽造、弱いものが、さらに弱いものを傷つけ、殺してしまうような事件、等々、しばらく前には決してなかったような出来事が起こってきています。

そして、さらに酷いことには、そんな残念な出来事など、あたかも他人事であるかのように、株価などがもてはやされ、「ヒルズ族」などと、一時の成金が祭りあげられています。まさに「邪見きょう慢」そのものです。その底に共通するものは何かと考えると、やはり「お金」に行き着きます。「とにかく儲ければ勝ちなんだ」「勝ち組になるんだ」と、でも本当にそうなんでしょうか。人間世界でも近代になるまでは、シェークスピア劇の「ベニスの商人」に出てくるシャイロックのように、お金を扱う職業、人は、さげすまれていました。人を差別する事はまちがいですが、そこには、「お金と付き合うことは慎重にしなければならない」という教訓がありました。商売でも昔は「浮利を追うな」という教えがありました。その質は現代でも変わっていません。

 お金は大切なものですが、「先ずお金」ではなく、また「自分の本当にしたい事」などと言って、何か「幸せの青い鳥を幻想する」のでもなく、先ず自分の目の前にある事、仕事に取り組んでみる。そこから全てが始まるのではないでしょうか。そしてその事に真剣に取り組めたとき、自然とある程度の金銭は手に入れる事ができ、そこで課題となるのは、儲け方ではなくその金銭の「使い方」になるのです。  「暦」の新たまるこの時、自分自身も「心機一転」、新たに一から出直しましょう。

      




目次へ