今、世界は! 

〜年頭の言葉

顧倒 2004年1月号より掲載

誠に残念な事だけれど“憂鬱”な年末年始である。
 年の始めだから、何でもいいから楽しい話題をと思うのだが、本当に出てこない。「景気」とか「雰囲気」とか誠によく言ったもので、自分自身の「気分」が全く盛り上がらない、そんな年末年始だ。
 一番の“憂鬱”の原因は「イラク派兵」である。と言うより、そんな大きな決断が、アメリカの言いなりで決定されている「事実」こそが“憂鬱”なのだ。さらに「経済運営」でも「強きを助け弱きを挫く」まさに悪しきアメリカ的あり方がはびこりだして、いっそう庶民の「気持ち」を削いで「景気」の回復を遅らせている。税収不足を少しでも補おうと増税が図られ、罰金の取り立ての強化など、さらに「気分」を滅入らせている。それら全てが、アメリカの指図で動いている事の“憂鬱”である。それなのに、アメリカのペットに成り下がる事を自ら選ぶ、志の低い「指導者」が高い「人気」で選ばれたり、「それこそが日本の生きる唯一の道だ」なんて「馬鹿げた事」を恥ずかしげもなく声高に垂れ流す「評論家」などがテレビに溢れている事が“憂鬱”である。「猿」は賢い動物だけれど、時に策に溺れるようだ。千仏洞にはよくジャータカ(仏陀の前世の物語)の壁画があるが、自分が橋になって川を渡らせて群れを救うボス猿の物語がよく描かれている。そんな仏陀の前身でもある感心な猿もいるかと思えば、今号の年頭の言葉に選んだ「猿猴取月」の猿は「水に映った月影を月と勘違いして、木の上から手を伸ばして取ろうとして枝が折れて溺れ死ぬ」 という愚かな猿である。
 さて今年の我が日本の重大な選択は、はたしてどちらの「猿」であろうか。願わくば本当に人々を救う道であってほしいのだが、どれほど「人助け」と力説してはみても、その者のやっている事が「弱肉強食」だから、とても信じられない。まさに、水に映る月に手を伸ばしているように思えてならない。
  誠に“憂鬱”な年末年始である。

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